- タイでは、タイ農業協同組合省が策定・推進しているQGAP、タイ商工会議所やカセサート大学が関与しているThaiGAP、そしてGLOBALG.A.P.の3種類のGAPが混在している。タイにおいては、2004年以降、食品安全性強化に力を入れることが閣議決定され、農業生産におけるGAPの普及が進められた。政府が策定しているQGAPの普及状況は、穀物・野菜・果樹においては、2013年時点で10万農場で導入されている。
1) タイにおけるGAPの概要とACFSの役割
- タイでは、タイ農業協同組合省の一部局であるNational Bureau of Agricultural Commodity and Food Standards(以下、略称のACFSで表記)が策定・推進しているQGAP、タイ商工会議所やカセサート大学が関与しているThaiGAP(GLOBALG.A.P.と同等性認証確立)、そしてGLOBALG.A.P.の3種類のGAPが混在している。
- QGAPの策定主体であるACFSは、2003年の組織再編で、農業協同組合省に新設された農産物・農産加工品の規格制定・監督をする部署である。図4-5-1は農業協同組合省の組織図であるが、ACFSは農業生産、農産物・農産加工品、食の安全性に関する規格を策定するとともに、そうした規格を審査・検査する機関を認定することになっているが、QGAPの農業者への審査・認証は、農業協同組合省内の品目別の部署(Department of Agriculture、Rice Departmentなど)が実施することになっている。
2) タイ政府GAP(QGAP)の概要と普及に向けた活動内容
- タイにおいては、2003年3月4日の閣議で、2004年以降、食品安全性強化に力を入れることが決定された。図4-5-2は、閣議決定された食品安全に関するロードマップであるが、農場レベルにおいては、GAPの導入が提示されている。政府によるGAPの推進においては、GAPにより、農業者の安全性に対する意識と知識レベルを向上させることが目標である。
- QGAPは、以下のように品目ごとに策定されている。(1)作物:米、アスパラガス、オクラ、サトウキビ、コーヒーなど計23品目。(2)家畜:肉用牛、養豚、肉用羊、ブロイラーなど計16品目。(3)水産:エビ、アワビ、ティラピア、スズキなど計15品目。
- 2013年12月時点での普及状況は、次のとおりである。まず、作物においては、2015年までに20万農場に導入することが目標となっているが、現時点では10万農場で導入されている。次に家畜については、畜産農家全体で20%以上導入が進んでおり、特にヨーロッパや日本への輸出が盛んな養鶏については、80%以上で導入されている。水産においては、輸出が盛んなエビで約90%導入されている。
- QGAPの審査は、農業協同組合省内の品目別の部署と、ACFSから認定された民間5社で行う。当初、審査は政府のみで行っていたが、政府のマンパワーも限られており、手が回らなくなってきたので、民間企業にも審査を依頼することになった。
- 審査料は、政府による審査の場合は無料だが、民間による審査の場合には有料である。なお、政府と民間では、審査の有効期間に違いがあり、政府による審査の場合、米3年(将来的には毎年)、その他穀物・野菜2年、果樹3年、畜産3年、水産物2年であるが、民間の審査機関による認証の場合、いずれも3年間有効となる。
- QGAPの普及に向けた活動としては、生産者向けには、普及センターが中心になって啓蒙活動を行っている。一方、消費者向けには、ACFSが策定した各種規格(QGAPも含む)の認証農産物に貼られる「Qマーク」(図4-5-3参照)の広報活動を行っており、Qマークがついた農産物の販売促進に努めている。
図4-5-2 タイにおける食品安全性に関するロードマップ
資料:ACFSのプレゼンテーション資料より引用
図4-5-3 政府が定めた各種規格の認証農産物に貼られるQマーク
注:マンダトリー規格(右)の方は安全性を中心にした規格で、
QGAP認証は、ボランタリー規格(左)の方に該当する。
資料:ACFSのプレゼンテーション資料より引用