EUにおける農産物流通業者の事例-フランスの事例

  • フランス・ブルターニュ地方に位置するJean L’Houre社は、Prince de Bretagneの野菜のみを取り扱う青果物の仲卸業者である。GLOBALG.A.P認証農産物の調達・販売に重点を置いており、調達した農産物の約8割を夏は国内向けに販売しているが、冬は約9割をドイツやイギリスなどへ輸出している。

1) 組織概要

  • Jean L’Houre(以下、ジャン・ルー)社は、1950年創業の青果物の仲卸業者である。本社に加え、プリンス・ド・ブルターニュの3か所の競り市それぞれに、会社の事務所がある。従業員は全部で18名で、うち6名が事務・管理部門に、他の12名は農産物・農場に対する検査・監査部門に従事している。年商は3000万ユーロ(約42億円)だが、これ以上会社の規模を大きくすると、組織構造が変わってしまうので、顧客数を増やさずに維持していくのを理想としている。
  • ジャン・ルー社の流通業者としての特徴は、GLOBALG.A.P認証農産物の調達・販売に重点を置いている点にある。農産物はプリンス・ド・ブルターニュの野菜しか扱っておらず、販売先は冬季は90%が輸出で、夏は80%が国内向けに販売されている。
  • 野菜に関して言えば、オランダ、ドイツ、イギリス、スイス、フランスといった国々では夏場は同じ品目の野菜を生産することが可能である。しかし、冬季にブルターニュ地方でとれるカリフラワーや西洋ネギは、上記のヨーロッパ諸国では冬場にとれないので、11月から4月にかけては輸出の割合が高くなる。

図4-4-1 ジャン・ルー社
図4-4-1 ジャン・ルー社

2) GLOBALG.A.P認証に対する流通業者の認知度

  • インタビュー調査に応じてくださったArche氏によれば、フランスでは、GLOBALG.A.P取得を要求する流通業者は少ないし、そもそもGLOBALG.A.Pに対する認知度が低い。したがって、フランス国内市場での販売に限って言えば、GLOBALG.A.P認証を取得しているからと言って優先的に購入されることはない。
  • GLOBALG.A.P認証農産物については、スイス、オランダ、ドイツ、イギリス、ベルギーの販売先からの希望が多い。そして、従来の顧客の中でGLOBALG.A.P認証農相農産物を要求する顧客が増えてきたので、GLOBALG.A.P認証農産物の取扱量を増やしてきている。
  • あくまで、Arche氏の私見だが、イギリスやオランダで流通業者が生産者に要求する規定が多いのは、フランスに比べてイギリスやオランダの国内法は厳しくないので、そうした国では民間主導の規定や認証制度が発達してきたのではとの見方だった。