EUにおけるGAP導入事例-フランスの取り組み事例

  • フランス・ブルターニュ地方に位置する生産者組織Terres de Saint-Maloは、生産者90名で構成され、うち50名がGLOBALG.A.Pの団体認証を取得している。主要な栽培品目は、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなどである。Terres de Saint-Maloの生産物は、Prince de Bretagneというブランド名で出荷され、ブルターニュ地方の3か所の競り市で、電子取引により販売されている。

1) 組織概要

  • Terres de Saint-Malo(以下、テラス・ド・サンマロ)は、フランス・ブルターニュ地方に位置する生産者組織である。所属する生産者は90名で、そのうちGLOBALG.A.P認証(団体認証)を受けているのが50名である。
  • テラス・ド・サンマロは、他の生産者組織6組織とともに、Cerafel(以下、セラフェル)という組織連合を形成している。セラフェルに属する生産者は2,350名である。セラフェルの3組織でGLOBALG.A.Pの団体認証を取得しており、個別認証も合わせれば、セラフェル全体で528名がGLOBALG.A.Pの認証を受けている。
  • テラス・ド・サンマロの主要な栽培品目は、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなどである。テラス・ド・サンマロの中核的な生産者であるフィリップ氏は、作付面積延べ74haで、カリフラワー27ha、西洋ネギ6ha、玉ねぎ1.5ha、馬鈴しょ13ha、大麦・小麦15haなどを栽培している。
  • テラス・ド・サンマロの生産物は、セラフェルの他の6組織の生産物と一緒に、Prince de Bretagne(以下、プリンス・ド・ブルターニュ)というブランド名で出荷される。プリンス・ド・ブルターニュの農産物を売買するための競り市がブルターニュ地方に3か所あり、そこでは電子取引により、1つの商品を同時に現物を見ずに3か所で競りにかける。
  • 生産者には、大きさと品質に関する規定書があり、それに沿った野菜を出荷する決まりがある。流通業者のほうもその規定書に沿った野菜が供給されることが分かっており、生産者と流通業者の間に信頼関係ができている。それにより、現物を見ない競りが可能となっている。このような電子取引が導入されたのは、新鮮な野菜をできるだけ早く販売先に供給するためである。なお、GLOBALG.A.Pの認証を受けた生産者が作った野菜については、競り市のときに認証を受けている旨が表示されることになっている。
  • 競り市に参加して野菜を購入する業者は約50社(後述するJean L’Houre社もそのうちの1社)で、その50社はスーパーマーケットなどの量販店、卸売業者、輸出業者などに販売している。

図4-3-1 電子取引による競り市
図4-3-1 電子取引による競り市

2) GLOBALG.A.Pに対する取り組み

  • フィリップ氏によれば、GLOBALG.A.Pの認証取得の準備を始めたのは2000年ころである。認証取得のきっかけは、最初にフランスの加工食品製造業者から認証取得の要求があり、その後でイギリスやドイツの大きな流通業者から認証取得の要求があったからである。
  • フランス国内で農業者・農産物に対する認証制度の一つに、Agri Confiance(以下、アグリ・コンフィアンス)がある。アグリ・コンフィアンスはGLOBALG.A.Pと管理項目が重複しているものが多いが、より環境保全に重きが置かれた認証制度である。
  • フィリップ氏などテラス・ド・サンマロの一部の生産者はもともとアグリ・コンフィアンスの認証を取得しており、GLOBALG.A.P認証取得へのハードルはそれほど高くなかったが、事務処理が煩雑だと感じていた。

図4-3-2 フィリップ氏の圃場
図4-3-2 フィリップ氏の圃場

3) GAP導入による経営改善効果と今後の課題

  • GAP導入によるメリットとして、フィリップ氏は、農薬の使い方に対する認識が高まったこと、そして農場内の整備やルール作りをすることで、次世代への経営継承が容易になることを挙げている。また、市場の傾向として、GLOBALG.A.P認証取得に対する要求は高まるものと思われ、次の世代に経営を受け渡す際には、GLOBALG.A.P認証がないと先の見通しは明るくないと感じている。