果樹作におけるJGAP導入事例-専門農協Kの取り組み

  • K農協では、契約先からの要請を背景に、JGAP団体認証を取得した。高齢化が進む地域にあって、K農協の積極的な指導、および契約先からの全面的な支援により、生産部会員全員での認証取得を実現している。

1) 地域及び組織の概要

  • 愛媛県に位置するK農協は園芸の専門農協で、そのなかのゴールドキウイ生産部会を単位としてJGAP団体認証を取得している。現在の部会員数は142名で、作付面積は33ha、1戸当たりの作付面積は10a~1.0haである。このうち6名は新規に作付を始めた生産者(未出荷)で、残りの136名全員で認証登録を行なっている。
  • 地域では、おもにヘイワードとゴールドキウイの二品種が栽培され、部会員の多くはヘイワードから移行した生産者が多い。また、作付規模の大きい経営は、ゴールドキウイの専業農家であるが、小規模な経営では果樹作以外にも水田作との複合経営も存在する。生産者のほとんどは60~70代を占めており、高齢化の進む地域として今後の担い手確保が重要な課題となっている。
  • ゴールドキウイの生産は、2001年にKA社との契約栽培が開始されたことが背景にある。その後、2003年から出荷が始まり、現在、K農協、全農えひめ、KA社の三者契約により出荷を行なっている。

2) GAPの導入について

  • K農協におけるJGAP取得は、契約するKA社からの要請が背景にある。2008年ごろより、GAP認証取得向けた検討が進められ、コンサルタントを招いて現地生産者全員を対象としたGAPの概要説明を行なった。このとき、役員等から順次GAP導入を進める提案もあったが、KA社より3年以内での取得を求められため、導入時から部会員全員で取り組むことを目指した。なお、生産者には、JGAP取得が契約栽培継続に必要不可欠という認識もあったため、認証取得への合意を得ることは難しくなかった。
  • JGAP認証取得の準備段階では、試行的取り組みとしてKA社独自の台帳を配布し記帳等の作業を進めた。また、2009年より指導者研修や役員、農協職員を対象とした研修会、さらに支部単位での説明研修会を行ない、その後、農協の技術員7名が個別に指導を行ないながら、部会員の農場整備等を進めた。2009年9月には1回目の内部監査を実施し、10月~1月に是正内容の確認(2回目の内部監査)を進めて、2010年にJGAPの本審査を行なった。
  • 導入段階において、最も苦労したのは農場の整備で、とくに肥料や薬剤の適切な管理に向けた倉庫整理に最も時間を費やしている。また、記帳や各種台帳作成も負担であったが、コンサルタントのアドバイスを受けながら、できるだけ簡素化するよう(日付や○✕、記号等で記入できる様式)を農協で工夫し、生産者の負担を軽減するよう努めた。

3) GAPおよび農場の管理体制

  • 現在の運営体制は以下のとおりである。事務局はK農協が務め、監査は全農えひめ、KA社から監査員をそれぞれ1名ずつ派遣、さらにK農協で4名が監査員補を務める。
  • 生産者はK農協技術員とともに毎年自己チェックを行ない、内部監査の結果は各生産者にフィードバックする体制をとっている。また、生産履歴はKA社に提出し、それ以外の帳票はK農協で保管・管理している。
  • また、KA社とはGAPへの取り組みに対する全面的な協力体制が構築されている。とくに資金面では、審査料、登録料、残留検査費用、各種シート等の支援を受けるとともに、導入時のコンサルタント派遣もKA社から行なわれている。さらに、GAPのみに関わらず、栽培マニュアルの配布や現地の視察・指導、収穫前の果肉色調査や収穫後の糖度・硬度検査が実施され、その結果も生産者にフィードバックされ、栽培技術の改善に役立てられている。

図2-11-1 K農協におけるGAP推進体制
図2-11-1 K農協におけるGAP推進体制

4) GAP導入による経営改善効果

  • 販売面の効果:他品種よりも販売単価が高く設定されており、地域内で最も収益性の高い露地作物である。GAPに取り組むことで、契約栽培が維持され、収益性の高い生産が実現できている。
  • 資材在庫の減少:資材在庫の管理により、期限切れや無駄な農薬の購入を削減できている。ただし、コスト全体という側面では農家の意識に拠るところが大きいため、必ずしもGAPの導入によってコストを削減できるというわけではない。
  • 生産者の意識:GAPに取り組むことで衛生管理面の意識が変化している。とくに一次選果における衛生管理の意識が向上している。
  • 作業面の改善:資材庫等の整備により、作業性は向上している。ただし、圃場での管理作業等についてはとくに改善された点はない。また、収量や品質も、施肥や防除等で改善されるものでないため、とくに効果があるとは言えない(芽かきや選定など管理作業の影響が大きく、生産者によっては作業競合や労働負担の面で適切に管理できない場合がある)。

5) 課題と今後の展開

  • 生産者はGAPの必要性を認識しつつも、生産者によってGAPの取り組みに対する積極性に差がある。また、審査等を継続するなかで、マンネリ化もひとつの課題となっている。今後、生産者の意識統一を図り、モチベーションを維持していくことが重要である。
  • また、二点目の課題として、指導員、審査員の確保も課題である。導入段階では7名の指導員がGAP指導への対応を行なっていたが、現在、職員を充分に当てられないなかで、136戸の生産者全てを巡回し、個別に指導することが困難となってきている(1~2月に前。生産者の自主的取り組める体制を整備するとともに、指導の効率化を図ることが今後の課題となっている。