畑作(茶)におけるGLOBALG.A.P.導入事例-法人経営Iの取り組み

  • 静岡県にあるI社は、茶園21.7haを運営するとともに、JGAP団体認証を取得した近隣の会員農家78軒から、生葉を集荷している。I社においては、2009年3月にJGAP団体認証、そして2009年6月にGLOBALG.A.P.団体認証を取得している。一連のGAPへの取り組みを通して、リスクマネジメントにとどまらず、会員農家の更なる品質向上が達成されることを期待している。

1) 地域及び組織の概要

  • 静岡県島田市にある株式会社I社は、茶園21.7haを運営するとともに、金谷と川根に荒茶工場を持つ農業生産法人である。自社農場の管理と2つの荒茶工場の運営を、計14名の従業員で行っている。
  • 生葉を全量I社に出荷する農家を会員農家と呼んでいて、それら会員農家は金谷工場については47軒・76ha、川根工場については31軒・36ha存在し(2013年11月時点)、I社の自社農場も1軒の会員農家として計上されている。なお、会員農家になるためには、GLOBALG.A.P.とJGAPの基準に基づいた農場管理することが要件となっている。
  • また、鹿児島県の屋久島にI社の関連会社があり、そちらでは30haの茶園を管理している。

2) GAPの導入について

  • I社におけるGAPに対する取り組みは、次のとおりである。
  • 上記の屋久島にある関連会社でまずGAPを導入することになり、2008年の夏から準備を開始した。11月にGLOBALG.A.P.とJGAPの審査を行い、2008年12月3日にJGAP個別認証、12月15日にGLOBALG.A.P.個別認証を取得した。
  • 一方、I社においては、2008年11月に、会員農家にGLOBALG.A.P.とJGAPの認証を取ることを説明し、2009年3月にJGAP団体認証、そして6月にGLOBALG.A.P.団体認証を取得した。
  • こうした一連のGAP導入のきっかけは、荒茶の仕上げ加工を行う親会社(後述するO社)の意向であり、親会社のISO9001のマネジメントレビューを踏まえて導入することとなった。
  • GLOBALG.A.P.の団体認証取得で苦労した点は、①手順書づくりと、②内部監査員の育成であった。防除履歴はGAP導入前からつけていたので、記録の手間はそれほど負担に感じなかった。農薬の管理について、会員農家の農薬は、すべて金谷の荒茶工場で保管しており、会員農家が農薬を使用する際には、金谷工場で農薬を希釈して使用することになっている。
  • I社の設立は2008年4月であり、法人設立からGAP導入までの操業期間が短く、そのためGAPのような新たなマネジメント手法導入に抵抗はなかった。I社では、GAPに関し認証取得が最終目的ではなく、あくまで安全管理と品質向上が最終目的であり、GAPを活用して更なるリスク管理と品質向上を目指している。

3) GAPおよび農場の管理体制

  • GLOBALG.A.P.の内部検査員は7名で、うち2名は元社員である。これら7名は1月にすべての農家を回る。また、内部監査員は2名である。
  • 会員農家に対するGAPへの取り組みに対するサポートについては、農家7~8戸に対し1名が担当している。土壌診断は、全会員、年に1回実施している。また、生産者の集まり(協議会)を、年に4回茶期ごとに開催するとともに、毎年12月にGAP決起集会を開催している。品質向上に向けて、茶園共進会を毎年開催しており、任意でコンクールに出品してもらい、出品者の畑を皆で回ることにしている。このようにI社では、品質向上やGAPの推進に関し、定期的に生産者同士が集まり、意見交換する場を設けている。
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4) GAP導入による経営改善効果

  • GAPで規定されているリスク分析をきちんと実施できる農業者ならば、品質に大きな影響を及ぼす作業工程を把握して、品質マネジメントもできると思われ、今回のGAPへの取り組みを通して、会員農家の更なる品質向上が達成されることを期待している。