畑作(茶)における産地・都道府県GAP導入事例-専門農協Gの取り組み

  • 茶の産地である三重県においては、茶専門のG農協を事務局として、伊勢茶GAPの普及が図られている。茶葉の販売において、茶葉の衛生管理(一般生菌、大腸菌)に対する取り組みが重要性を増す中で、GAP導入は衛生管理に役立つものと考えている。実際に、GAPの導入により、一般生菌数が減少するとともに、異物混入も減少している。
  • さらに、チェック項目に沿って作業を実施することで、どこが問題でどう管理していけばよいかという理解が生産者に深まっており、将来的には茶葉の品質向上も期待できる。

1) 地域及び組織の概要

  • 三重県は、茶専門のG農協を事務局として、伊勢茶GAPの普及が図られている。伊勢茶GAPは、三重県全域で約1,800戸の茶生産者に導入されており、茶の栽培面積は全体で2千数百haである。
  • 三重県内にはG農協も含めて専門農協による茶市場が2つ、さらに全農が持つ茶市場が2つある。三重県の茶業農家の7~8割は4つの市場に出荷している。それ以外は、問屋への直接販売や個人への直接販売が行われている。三重県では昔から原料茶産地の性格が強く、生産のみに集中する傾向がある。

2) GAPの導入について

  • 伊勢茶GAPの設立については、県内の茶の生産体制について、これまで個別産地毎の生産体制であったものを、今後はある程度統一していく必要があるという認識から、茶業会議所が先頭になって、2003年に「安全安心な伊勢茶づくり運動」を開始した。しかし、2003~06年の第一期は形だけで、具体的な取り組みは進展しなかった。そこで、第一期の反省を踏まえ、2006年より生産履歴記帳の充実を図った(2006~08年)。
  • 生産履歴の記帳においては、生産者がすでに作成していた出荷の際の出荷伝票をベースに、「どの畑で収穫した」、「どの農薬を使用した」など必要な項目を追加することを進めた。これにより、多くの農家に生産履歴が普及し、問屋からの開示請求に対しても履歴を提出できるようになった。
  • その後、GAPに対する社会的関心の高まり(国のGAP運動)を背景に、「安全安心な伊勢茶づくり運動」としてGAPに取り組むことになった。当時、農水省が作成した基礎GAPをベースに、GAP用のチェックリストを作成した。
  • 2008~2010年になると、第二期に検討した履歴記帳とGAPチェックシートをファイリングして生産者に配布した。各地域のJAに協力してもらい、チェックシート等の回収も行ったが、あまり真剣にチェックされていない様子だったため、市町村にある茶業組合からの推薦により、地域で処理量が多く、影響力の大きい8工場(農家)を重点工場に指定し、重点工場に対しては、シートの確認やGAPに関する研修会を実施した。さらに、国の雇用促進事業により指導員を1人雇用し、重点工場を定期的に巡回することにした。このような取り組みをして重点工場に対して特にGAPを普及定着させることで、そこからGAPのメリットが周辺農家に伝わり、GAPが広く普及することを期待した。また、GAPの高度化・普及のため、2012年度から県や農協、茶市場、重点工場の30数名でJGAPの研修を受講している。
  • GAP導入当初は、そこまでやる必要があるのかという生産者からの反発があった。その背景には、生産履歴がちょうど普及した段階でもあり、新たにGAPに取り組むことで負担が増えるという懸念があった。一方、原料茶産地として、飲料メーカーや食品メーカーとの取引上、やらなければならないという認識もあった。

3) GAPおよび農場の管理体制

  • GAP推進の母体である「安心安全な伊勢茶づくり推進委員会」は、茶業会議所を先頭に、農協、全農、茶市場、県、普及センターなどで構成されている。事務局はG農協である。
  • 伊勢茶GAPのチェックリストは具体的に、作業単位毎に管理項目を作成している。作成の際には、鹿児島のKGAPを参考にしており、A4一枚の形式にまとめている。また、管理項目は、農林水産省が策定した「農業生産工程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」と比較しながら推進委員会で作成した。具体的には、生葉農家用の管理項目は、茶期前は35項目(主に農場管理に関する項目)、茶期毎に35項目(主に作業毎の管理点)となっている。
  • 履歴記帳運動とGAPへの取り組みを定着させるために、生産履歴を一括管理できるソフト(事務局製作)を組合員に無償配布している。こうしたシステムの導入により、出荷の際に、各市場、買い手が履歴とGAPの取り組みを確認できる仕組みが構築されている。

4) GAP導入による経営改善効果

  • 一般的に、茶価は下落傾向であり、茶葉を作れば高く売れるという時代ではなくなってきている。そして、衛生管理(一般生菌、大腸菌)が取引の重要な条件になっている中で、GAP導入は衛生管理に役立つものと考えている。実際に、GAPの導入により、一般生菌数が減少している。最近では、販売先から、一般生菌の数値基準を示されることもあるが、そうした要請にも対応可能である。
  • また、過去には出荷前段階で異物も多かったが、GAP導入後はほとんどみられなくなった。GAPにより、当たり前のことを明文化し、その都度チェックすることで、衛生管理が向上した。
  • さらに、チェック項目に沿って作業を実施することで、どこが問題でどう管理していけばよいか(加熱のタイミングや温度など)という理解が生産者に深まっており、将来的には品質向上も期待できる。

5) 課題と今後の展開

  • GAP推進上の今後の課題であるが、GAPの実施状況の確認を指導員が巡回して行いたいが、なかなか人員を確保できない状況である。また、事務局の担当者をどう確保するかも今後問題になってくる。生産履歴を管理するソフトウェアのメンテナンスだけでも、人が変わると難しく、サポート内容やデータベースの標準化などが今後必要である。
  • 全般的に、生産履歴については取り組めているが、今後は重点工場を中心にGAPの取り組みをさらに広めていく必要がある。組合員の中には、GAPはまだまだやらされている感がある。生産履歴の記帳については、開示請求があるので、やらなければならないという意識ができているが、GAPの管理項目も確認結果の開示を求められるようになれば、生産者が責任感をもって取り組めるようになるかもしれない。