野菜作におけるGLOBALG.A.P.導入事例-法人経営Fの取り組み

  • 熊本県に位置する露地野菜作のF社は、延べ50haの面積で、ニンジン、ゴボウ等の根菜類を中心に野菜を栽培している。F社は、事業マネジメントをより良い形にするために、2007年にGLOBALG.A.P.認証を取得し、その後2012年には、第1回GLOBALG.A.P.アワードを受賞している。F社では、GLOBALG.A.P.認証および独自に開発した情報管理システムを活用して、事業のリスクマネジメントおよび業務の効率化が図られている。

1) 地域及び組織の概要

  • F社が所在する熊本県上益城郡益城町は、熊本市の東隣りに接しており、県中央部の畑作地域である。町内には平坦地から山間地まであり、その中でF社は中間地に位置する。
  • 経営概要は、表2-6-1のとおりである。生産規模は年間延べ約50ha(圃場数で約140カ所)であり、ニンジン、ゴボウ等の根菜類を中心に8種類の農産物を生産している。
  • F社の事業運営は、会長以下4名の役員と社員15名、パート5名により行われている。社員15名のうち2名が農場マネージャーを務めている。この農場マネージャーとは、トラクターや収穫機の運転ができ、さらに臨機応変に作業の段取りの変更ができる者である。
  • 販売先は国内だけに留まらず、農産物については2006年から香港、台湾などの東アジアに、また、農産加工品(切干大根)については2008年からヨーロッパへ輸出している。

表2-6-1 F社の経営概要(2013 年)
表2-6-1 F社の経営概要(2013 年)

2) GAPの導入について

  • F社は、2007年にGLOBALG.A.P.認証を取得しているが、その目的は事業マネジメントをより良い形にするためであった。F社はGLOBALG.A.P.以外にも、生産情報公表農産物(JAS規格)の認証も取得している。生産情報公表農産物は、生産に関する情報管理体制と情報開示のレベル向上とその維持を目的とし、GLOBALG.A.P.については、HACCP的安全管理について、取り組むべき内容を具体的に示したテンプレートとして、オペレーションにおける安全管理の標準化に活用している。
  • 2012年には、GLOBALG.A.P.の第4版オプション1個別認証を日本で最初に取得した。さらにF社で開発した農業生産情報管理システムが、GLOBALG.A.P.の認証取得を支援する点などが評価され、第1回GLOBALG.A.P.アワードを受賞している。

3) GAPおよび農場の管理体制

  • 生産の拡大に伴い、管理すべき情報量の増大に直面したF社は、2000年頃から情報管理システムの導入に向けた開発を始め、2001年に生産情報管理及びトレーサビリティーを目的とした情報管理システムを自ら設計・開発した。システム開発に当たっての基本設計における思想は、自らの生産事業の「見える化」と、事故発生時の早期の原因究明及び検証を可能にするという点にあり、これはその後改良した現在のシステムに至るまで変わっていない。
  • 作業記録は作業終了後、自社のデータベースに作業者であるスタッフが入力する。入力内容は、GLOBALG.A.P.と生産情報公表農産物に準拠させた入力内容となっていて、その日の農作業に関する5W1H(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように)、および収穫の際には収穫したコンテナ数(ニンジンを例にとれば1コンテナを20kgで換算)を入力することになっている。このようなシステムにより、記帳および情報の集約に関し省力化が図られている。
  • こうした記録の活用方法の一例としては、圃場ごとの収量に関する情報を全社員で共有し、低収量の圃場については、なぜ低収量になったのかなど、その要因を作業者全員で議論し、収量向上につなげている。

4) GAP導入による経営改善効果

  • これまで述べたように、GLOBALG.A.P.認証および情報管理システムの導入を通して、事業のリスクマネジメントおよび業務の効率化が図られている。また、現在は、GLOBALG.A.P.認証農場間で連携して、販路の拡大に努めている。このような他の農場との連携が可能なのは、GLOBALG.A.P.という共通する工程管理手法を導入する農業者同士ならば、食品安全などの問題を起こしにくいことに加え、何か問題が起きたときに、原因と責任の所在を明確に把握できるからである。