水稲作におけるJGAP導入事例-法人経営Bの取り組み

  • 新潟県柏崎市に位置するB社は、経営面積98.7haの水田作経営であり、2009年にJGAP認証を取得している。B社では、JGAP導入を契機に、各従業員に責任と権限を与えることにし、従業員の自主性向上を促した。その結果、従業員の指示待ち時間がなくなり、さらに使用予定の機械や資材の準備も従業員が自主的に行うようになり、機械や資材の不備による作業遅延が解消された。

1) 地域及び組織の概要

  • 新潟県柏崎市に位置するB社は、経営面積98.7haの水田作経営である。水稲75.6haのほか、そば4.7ha、野菜0.9haなどを作付けしており、餅の加工販売も行っている。
  • 役員は2名で、社員は8名、臨時雇用は年間延べ650名である。法人設立は1992年で、現取締役相談役が代表を務めていたが、2011年に現取締役相談役の長男が代表取締役に就任している。

2) GAPの導入について

  • B社では、2009年にJGAPの認証を取得している。導入の背景であるが、この当時、現代表取締役は農場全体の管理のために何かしらの基準の必要性を感じていた。ISOの導入も検討したが、ISOは農場の部分的な管理にしか使えないが、JGAPは農場全体の管理に適していると考え、JGAP認証取得を決断した。
  • JGAP認証取得およびその維持継続には、従業員全員が理解し、納得できるルール作りが必要なため、従業員が多いとルール作りが大変であるが、同時にこうしたルール作りに魅力を感じた。B社は、社長によるトップダウンの体制が続いていたが、GAP導入に伴う農場内のルール作り等を通じて従業員の自主性が向上し、社長がいなくても生産現場が回るようになることを現代表は期待していた。

3) GAPおよび農場の管理体制

  • 従業員の自主性向上を促すために、B社では、従業員主導によるルール作りのみならず、GAP導入を契機として、責任と権限を各従業員に与えることにした。具体的には、播種、田植え、収穫など水稲作に関する作業別に責任者を割り当て、各従業員はいずれかの作業責任者を任せられる。従業員により、農作業経験や技術の習熟度は異なるわけだが、作業の重要度のランク分け(5段階)を行い、経験の少ない従業員は重要度の低い作業の責任者に就くことになっている。責任者をエリア別や品種別に割り当てると、責任者の経験や知識にとは無関係に、生産物の収量・品質に担当者間のばらつきが出てしまうため、現在の作業別責任者性を採用している。
  • B社における営農に関する年間のPDCAサイクルは、次のとおりである。まず、11月1日に、会社の年間目標を立て、作業責任者を決める。そして、全従業員が次年度の個人目標を立てることにしている。その後1月に年間の生産計画を立案し、3月から営農が開始される。
  • 営農開始後は日別と週別のミーティングで、日々の作業内容の情報共有や、作業に関する計画と実績とのズレへの対応などが話し合われる。そして、田植えが終了した時点で、年間の作業計画を見直して修正を図る。
  • 稲の収穫前には、JGAPの自己審査を実施して、収穫し全量検査終了した後で、年間総括ミーティングを実施する。総括ミーティングにおいては、各自、個人目標を達成できたかどうかについて、自己評価を報告することになっている。

4) GAP導入による経営改善効果

  • GAP導入により、B社においては、職場内での労働安全に対する意識向上、および従業員の自主性向上により組織の活性化が達成された。
  • 従業員の自主性が向上したことで、指示を待ってから作業に着手するという指示待ちの時間がなくなり、作業計画等をもとに皆が自主的に考えて作業を進めるようになった。そして、使用予定の機械や資材の準備も自主的に行うようになったので、こうした機械や資材の不備による作業遅延が解消された。