水田作における産地・都道府県GAP導入事例ー総合農協Aの取り組み

  • 秋田県にある総合農協Aは、水田作、野菜、果樹と複合型の農協である。安全・安心な農産物の供給体制の整備および外部へのPRのために、栽培日誌の記帳やA農協独自のGAPに取り組んできた。GAPについては、全品目で取り組んでおり、2011年度からは、県GAPの開始に伴い、秋田県GAPに則した管理項目で実施している。

1) 地域及び組織の概要

  • 秋田県南部の内陸部に位置する総合農協Aは、水田作、野菜、果樹と複合型の農協である。2012年度の出荷量・金額は、米で42,000トン(70万俵)、きのこ類20億円、果樹20億円、スイカ11億円、花き7億円などである。

2) GAPの導入について

  • A農協では、安全・安心な農産物の供給体制の整備および外部へのPRのために、次のような取り組みを行ってきた。
  • まず、2004年度に、米、野菜、果樹、花きの各部門において、OCRで読み込む栽培日誌の記帳を開始した。また、米のトレーサビリティとして、どこの圃場のものを出荷するかを春先に組合員が提出する協定書に明記してもらうとともに、ドリフト対策として隣の圃場で何を栽培しているか、また作業委託を行っている場合には、委託先が誰かも表記してもらうこととしている。そして、出荷前には、生産履歴書の提出を求めている。
  • また、農産物の安全性確保には第三者機関による検証が必要と感じたため、内部および外部の者で構成される「安全・安心な農産物づくり推進協議会」を設立した。さらに、記帳運動の内部検査を行う内部検査委員会を設置した。内部検査委員は、県指導機関や市場、JA全農とJA全中等の外部の関係者で構成され、A農協が取組んでいる栽培防除日誌の確認を行っている。また部門別の部会代表も委員として参加しており、他の部会の日誌を確認し相互検証を行っている。
  • 2008年度に入り、上記の「安全・安心な農産物づくり推進協議会」で、GAPに関する議論が始まり、2009年度に、A農協独自のGAPを導入した。
  • 当初は、水稲、花きだけで導入予定だったが、全品目・全生産者で取り組むことになり、部会ごとに品目に応じたGAPを作成した。この当時のA農協GAPは、月別かつ品目別にGAPの管理項目チェックシートを作成し、それを組合員に配布していた。なお、開始当初のチェックシートは、月別かつ品目別で、作成する方も記帳する方も大変だったため、現在は穀物、青果といった作目ごとに年間1枚のチェックシートに改良されている。
  • GAPの管理項目チェックシートは、組合員に「作業の安全のために」と説明して、普及を図った。全品目での取り組みであるものの、各生産部会長がGAPへの取り組みに積極的だったため、推進が図られた。
  • 2011年度に、A農協版GAPマニュアルを配布した。また、同じく2011年度には、秋田県独自のGAPも始まり、A農協のGAPは現在、秋田県GAPに則した管理項目となっている。

3) GAPおよび農場の管理体制

  • GAPの推進に向けて、年間の運営体制は次のとおりである。
  • 冬の間にGAPチェックシートをOCRで読み込む。年度末に「安全・安心な農産物づくり推進協議会」を開催し、GAPへの取り組み実績、日誌や協定の確認実績、指導内容、次年度取り組むことなどを報告・議論する。そして、4月に各生産部会の総会を開催し、そこでGAP等に関する啓蒙を行っている。

4) GAP導入による経営改善効果

  • 現時点では、GAPそのものによる経営改善効果は見られないが、安全・安心な農産物の供給体制を整備する上で実施している栽培日誌は、収量がいい人の栽培内容を参考にできるため、営農指導に使えるので有益である。
  • また、販売面では、生産履歴がきちんとあるということの影響は大きい。

5) 課題と今後の展開

  • GAPについては、組合員間の中で、「やらされている」感がある。GAPに取り組むことの目に見えるメリットがあればいいと感じており、例えばGAPに取り組んでいる産地をピックアップしてくれるような市場が出てくることを期待している。